注意

この記事は2023年アドベントカレンダーの2本目の記事で、12/6~12/10 の5日分のアルバムを紹介しています。過去の記事は以下のリンクから辿ってください。

Shadow Theater - Tigran Hamasyan (2013, Verve Records)

アルメニアの鬼才、ティグラン・ハマシアン。「鬼才」という言葉がこれほど似合うジャズピアニストもいないんじゃないか。ジャズ、ロック、メタル、クラシック、トラッド、なんでもござれの不思議な音楽を楽しめる。

冒頭の「The Poet」からいきなり強烈な個性を発揮しており、大陸を思わせる耳慣れないメロディや不思議なリズム、壊れかけのオルゴールのように不安を誘うピアノ、上手いのか下手なのか、何を歌っているのかもまったくわからないボーカルと混乱の極みだが、聴いてるうちにだんだんフワフワといい気分になってくるから不思議なものだ。得体のしれない魔力がある。

これはまったくの余談なんだけど、とある縁で我が家に取材に来られたライターさんに「ティグラン・ハマシアンなんて聞いてるやつは変態に決まってる(うろおぼえ)」みたいなこと言われて笑った覚えがある。

Nostalgia - Fats Navarro (1958, Savoy Records)

夭逝のトランペッター、ファッツ・ナヴァロの名演集。タイトル通り、哀愁を感じさせるような熱っぽい演奏が耳に残る一枚。本人以外にもそうそうたるメンバーでの演奏で、テナーサックスとの掛け合いも素敵です。

聴いていてあまりに気持ちがいいので気づいたら1枚聞き終わっているようなアルバムで、テクニカルな演奏ながら気楽に何回でも聴いてしまうバランスが絶妙。

Wave Motion - SHE IS SUMMER (2019, SIS RECORDS)

かわいい声のボーカルとおしゃれな曲調のエレクトロポップ。個人的に大好きなバンドの Shiggy Jr. と合わせて現代シティポップ(?)の2大巨塔だと勝手に思ってたけど両方解散してしまった。

このアルバムでは「CALL ME IN YOUR SUMMER」が最高で、この何ともいえないふわふわしたダウナーさがめちゃくちゃクセになります。メロディがほんとに飛び抜けてうまいんだよな…。

Desperado - Eagles (1973, Asylum)

かの有名な「ならず者」を収録したアルバム。「ならず者」はライブ盤とかベスト盤でも絶対入ってるので曲自体は大好きだったんだけど、実は最近までオリジナル・アルバムを聞いたことがなくて「もっと早く聞いときゃよかったな…」となった一枚。「テキーラ・サンライズ」もこのアルバムが初出っぽい。

イーグルス初期のカントリー色が強めの作品で、西部劇のギャングたちを歌ったアルバムらしい。悲しげなメロディの「ドゥーリン・ダルトン」から始まり、紆余曲折を経て「ならず者」、そして物語の終わりを感じさせる最後の「ドゥーリン・ダルトン/ならず者(Reprise)」で幕を閉じる構成の巧みさがイーグルスの真髄かもしれない。ここまで印象に残ったメロディが再び流れ、今までの旅が走馬灯のように…。

背景や歌詞などの解説がこの記事(Eagles Desperado 解説と訳詞)に詳しくまとまっているので、聞きながら読んでみるといいかもしれない。

ELT Songs from L.A. - Various Artists (1999, avex trac)

Every Little Thing の楽曲を西海岸のアーティストたちにカバーさせた企画アルバム。最低限の楽譜だけ渡して好きなように編曲してもらったらしく、トラックごとに担当したアーティストの特色が出ていておもしろい。ゲテモノかと思いきや、さすが歴戦のツワモノたちがカバーしただけあって元の曲の良さを活かしながら暴れてくれてます。

一曲めの「たとえ遠く離れてても…」のソウルフルなパワーに度肝を抜かれるが、個人的な見どころはシカゴのジェイソン・シェフがカバーした「Over and Over」。イントロからもう完全にシカゴの楽曲にしか聞こえない。ブラス・セクションも、コーラスのビル・チャンプリン(だよね?)も含めてシカゴ節が炸裂してて最高です。

一方で TOTO のジョゼフ・ウィリアムズがカバーした「Dear My Friend」はかなり苦労の跡が垣間見える出来で、歌詞にかなり苦戦したな…というのも感じられて面白い。