「ゴジラxコング 新たなる帝国」を見てきました。とりあえず思うところがいろいろあったので、憶えてるうちにメモしておきます。好き勝手書いてるので反論などあれば好きなように殴ってください。

前作はどうだったのか

わたしの中では KOM がモンスターバースの中では最高傑作で、前作「ゴジラvsコング」はマイナス5000兆点くらいだと感じたので、今回は自分の中でハードルが海の底まで下がった状態で見ています。また、後述しますが、キングコングとゴジラが両主役で対等なストーリーを書くのはそもそも不可能だと思っているので、基本的にはキングコング映画だと思って鑑賞しています。

総合評価

100点満点で60点くらいでした。少なくとも前回よりは100倍くらいまともな映画だったと思います。ちなみにゴジラ映画だと思って評価するとマイナス5000兆点ですね。ゴジラが見たいのであればこの映画は見ないほうがいいです。

良かった点

ストーリーの破綻がない(人間さんサイド)

前作ゴジコンは完全に手抜きが透けて見える最悪のストーリー(端末に水をかけたらリモートの機械が壊れるなど)だったので、それと比べれば人間さんサイドは取り立てて減点要素はないような気がしています。特別に素晴らしいとまでは思いませんが、まあ並くらいじゃないでしょうか。

地下世界の映像美

地下世界のビジュアルはかなり良かったと思います。冒険心をくすぐられるような風景が多く、マジック・ザ・ギャザリングのゼンディカーを彷彿とさせるような壮大なファンタジー風景はかなりクオリティが高かったという印象です。

正直なところ前作ゴジコンでの地下世界のシーンはかなり不満で、そもそもゴジラとコングのプロレスを期待してたのにこんなシーンほんとに必要?監督がやりたかっただけなんじゃないの?と思っていましたが、今作はまあそういう作品なんだと最初から思って見ていたので減点要素とはしていません。大自然が息づく地下世界と対比してゴジラサイドが世界各地の大都市をめぐってワールドツアーやってるのも、構成としてけっこう面白かったです。

ゴジラ(いちご味)

いままでわたしが見てきたゴジラは青く光りがちだったので、目まで赤く光ってるゴジラは新鮮でよかったです。最後の戦闘シーンはなかなか迫力があって悪くなかったんじゃないでしょうか。

良くなかった点

ストーリーが破綻している(怪獣さんサイド)

今回はゴジラの行動が意味不明すぎて全く魅力を感じなかったし、そもそもこの話ゴジラいなくても別にいいんじゃないかなとすら思いました。過去の作品の中ではさまざまなゴジラが登場するとは思いますが、わたしが好きなのは「誰からもコントロールされずに何もかもを破壊する災害の化身」みたいなゴジラなので、今回の「コングに呼ばれたら来る都合のいい彼氏くん」みたいな立ち位置は受け入れがたかったです。

地上に新たに登場した怪獣を殺して回るというのは KOM から考えればわからなくもない行動なのでそれはいいんですが、原発を襲ったり北極海にウミヘビを殺しに行ったりするときに「何かに備えて力を蓄えてる」みたいな雰囲気出してたけど結局あれは何に備えてたのかよくわからなかった…。せめて最後の咆哮のシーンで氷の怪獣くんがひれ伏してたら「おっコイツ KOM ちゃんと見とるな」くらいは思ったかも。コロッセオのなかで丸まって寝てるゴジラとか解釈違いすぎるんですけど…。

そもそもキングコングとゴジラの食い合わせが非常に悪いのではというのを前作ゴジコンから思っています。ある程度の社会性を備えており、人間ともおおむね中立な関係で、ましてや他社と高度なコミュニケーションすら取ることができるキングコング。一方で、誰とも徒党を組まず、目に付くものをすべて破壊して回るゴジラ(このキャラ付けは私の願望が大いに含まれているため、モンスターバースではそうではないのかも?でも KOM まではそんな感じだったよね…)。この相容れない二者を単一のストーリーに登場させるには、どうしても人間さんサイドと通じることができるキングコングを主役に持ってこないと物語が成立せず、結果的にゴジラの立ち位置が非常に微妙なものになってしまうという構造的な問題があるように思えます。アメリカ人が撮るハリウッド映画だからという面もあるでしょうが、仮に日本人監督が撮るとしてもゴジラの処遇に悩まされるのは同じなんじゃないかなと。

また、キングコング自体にいままで触れてきていないわたしにも大きな問題があって、ゴジラについては明らかに架空の怪獣だという認識を持っている一方で、基本的に造形が現実世界の類人猿の延長線上にあるキングコングを同格の怪獣だと心の底ではみなしていない自分がいます(ファンに殴られそう)。そういう意味で、あんまりゴジラとキングコングが戦うという絵そのものに魅力を感じられていないという事情があります。これについては映画に非はなく完全にわたしが悪いのですが…。

怪獣のスケール感

今回キングコングは最後のシーン以前は一貫して地下世界で活動しています。地下世界には人類の手が入っているエリアはほとんどなく、限られた場所にごく小規模な調査のための前哨基地があるにとどまっています。こういった自然のままの風景のなかでキングコングや怪獣が活動すると、ビルや大規模な建造物から相対的なスケール感を得ることが難しく、本来巨大なはずのキングコングが小さく見えてしまうという問題があります。これについては前述の「造形が現実世界の類人猿の延長線上にある」という点がかなり悪影響を及ぼしており、どうしても大きめのゴリラが暴れている絵に見えてしまうんですよね。終盤に手負いのコングが集落に逃げ込んでくるシーンで、ようやく人間との比較で「こんなデカかったんだ…」という気づきが得られたように記憶しています。

同様に市街地ではない場所で怪獣を描いていた作品としてはアニゴジ第1部がありましたが、こちらも同様にスケール感があまりピンと来なくて迫力が少ない作品だなという印象を持っていました。一方で、KOM ではけっこう殺風景なところで怪獣プロレスをやっていましたが「迫力がないな」と思った記憶はまったくなくて、このへんは演出とか撮影技術の差なんですかね。

やっぱり怪獣はデカくてなんぼ、物壊してなんぼだと思うので、プロレスやるなら市街地は避けられないのかなと思います。そもそもわたしが怪獣映画の「よさ」のひとつだと考えている「怪獣の怖さ」って、自分の周りの日常が破壊される「怖さ」なんですよね。その点シン・ゴジラは完璧で、具体的に人が死ぬ描写はなくとも、そこに住んでた人が今まで積み上げてきた日常が圧倒的な暴力によって崩れていくカタルシスがありました。でも KOM はこれには当てはまらないのに最高オブ最高なんだよな…なんなんだあの映画?

おわりに

だいたい思ってたことを書いてみました。実際書いてみると、今作に対する感想というより近年の楽しめなかった怪獣映画についての考察というか恨み節みたいになってしまいましたが…。 とりあえずゴジラを求めて見に行くのはあんまりおすすめしませんが、キングコングのファンなら楽しめる映画なんじゃないでしょうか。